「起業家になりたい私、カッコイイ」 人間の心を開放するアイテム ”起業家ライセンス” 与沢翼とニューヒルズ族の問題の本質は第三者にあり
ニューヒルズ族
近頃、与沢翼という男が旗頭にニューヒルズ族とやらが有名になっているらしい。
まぁ、細かい話は説明するのが面倒くさいし、袋叩きになっている様子やツッコミの数々はここらへんで確認していただきたい。
で、詐欺師詐欺師と呼ばれる彼らのビジネスと、それに金を払う消費者という両者の関係を改めてまじめに考えてみた。
与沢翼のビジネスはなんなのか。まずここがよくわからん人が大多数じゃないのかと思う。
と、言うのも、彼らの言ってることというのが、散漫でわかりにくく、
フリーエージェント・スタイル
とか
月収1億円を秒速で稼ぐ
とか
コアの部分を煙に撒くための横文字などを多用するため非常にわかりにくいわけだけど、基本的には起業を勧めているわけである。
これがまず彼らの観点。一種の起業コンサルタントなのである。
で、彼らのメインの顧客層はなんなのかまじめに考えてみたけど、それはごく普通の少しばかり常識と考える力が欠落した人達。いわゆる情弱が多いんじゃないんだろうか。
モバゲーとかGreeとか、mixiで出会いを探しまくってるような人々がもろに当てはまると思われる。
で、基本的な動機は、なんなのかまじめに考えてみたけど、自分の人生を変えたいのがメインじゃないんだろうか。
つまり、人生を好転させる何かを見つけなきゃと思ってはいるけど、
どうすればいいのか具体的にわからない人達に、ある日与沢翼のような人間が燦然と登場するわけ。
で、彼らにわかりやすく明快な答えを与える。
人生を変えたければ、有名になればいいじゃん!お金さえあればなんでもありですよ!! とね。
で、いわゆるこの手の情弱な人達っていうのは、自分が他人から金を得ようと思えば、時間とか身体を換金するくらいしか方法はないってことだけは熟知してるわけで、
なにか考えて起業(真面目な意味で)をしようと思ってもそれは無理だってよくわかってるから、彼らに自らのなけなしの金と運命を預けるんじゃないだろうか。
つまり、起業をするのって特別な資格とか基本的に必要ないから、自分に何ができるかわからない人達にとってはまずそこが敷居が高いわけ。
看護師とか、危険物取扱責任者とか、二種免許とかみたいに免状があれば、業としてそれをやる「お許しが出る」ものじゃないからね。
そして、今までの経歴に問題や犯罪歴があっても、最後に立派になって金持ちになりさえすれば全てが過去の経歴として許容されるという出口を与えてるわけ。
まとめ1 : 与沢翼の売り物は起業コンサルタントと人生相談
まとめ2: 与沢翼のお客さんは起業家ライセンスを欲しがっている
で、この関係を冷静に見ていて思うんだけど、与沢翼のやってることがそんなに悪いこととは俺にはどうしても思えない。
なぜかというと、彼らの顧客層というのは、自分の人生を変えたいと激しく願っていて、その術を全く持たない人たちであって、
普段と違う自分になるために金を出しているのであって、本質的に本当に金持ちになりたいとかまじめに考えてないんじゃないのかと思うからだ。
想像してみてほしい。起業したいとか、金持ちになりたいと考えながら毎日サラリーマンやってるという人を。
本当にまじめにそんなこと考えていたらサラリーマンなんかやってない。
誰が考えたってサラリーマンから大金持ちになれる可能性もなければ、起業するだけの動機や目的が有ったらとっくに起業してるからだ。
つまり、与沢翼のお客さんは、「自由な自分になりたい、いつもより目立っちゃおう」と思ってるわけで、現実的にはその手段を提供しているわけである。
主婦としての生活を続けて、毎日つまらないという思いに苛まれていた人が、ある日ただの主婦から「起業家志望の主婦」に変身する。
ただのサラリーマンから「起業に挑戦しようと行動を開始したサラリーマン」になる。
運転手仲間と焼酎で盛り上がっていた自分が、ある日突然「ITで起業を志す運転手」になる。
そして、パーティーやセミナーで”起業家”(ってなんだよそれw)と出会うことも出来て、いつもと違う仲間に自分の将来の夢を聞いてもらえたりするオプション付き。
変身願望がある人に、変身のアイテムをニューヒルズ族はちゃんと引き渡してる。
不自由な思いを持って暮らしていた人の背中に、ある日突然翼が生える。与沢翼とはよく言ったものである。(まさに名は体を表しとるなw)
需要に対して目に見えにくいにしろ商品を引渡しはしているわけで、頭っから詐欺ってわけじゃない気がする。
なぜなら、俺達第三者に他人にこう生きるべきだという生き方は押し付けられないわけで、それが一番オトクな方法にせよ、「アンタは主婦だから(労働者なんだから)コツコツまじめに生きろ」と押し付ける権利なんか第三者にはない。どういう生き方をしようが彼らの勝手。
(まぁ、犬に服を着せる人もいれば、そうじゃない人もいるわけで、指弾する人もそれはそれで勝手だと思うけどね。)
与沢翼のやっていることは、つまり運転免許の教習所とかと一緒なことで、起業家ライセンスの販売が本業である。
そしてただセミナーに出席しているだけの人に、「あなたはもう起業家です」という言葉を投げかけることで、起業家ライセンスを発行している。
実質的には、2,3日練習したらだれでも運転できる車の免許を取得するのに何十万もとっている国の制度と同じ事なのであって、顧客層がニッチで絞りこまれているから何百万もかかる仕組みになってるんだろう。
実現したい形さえあれば誰でもできる起業(段々言うのが恥ずかしくなってきたぞ、この単語)も、実現したい形がない人にとっては太陽を西から昇らせるのと同じくらいの難行に見えてるわけだ。
与沢翼のビジネスは貧者の富籤であり、あるいは起業家ライセンス発行業である
この構図の中で、一番リテラシーを問われているのは我々第三者ではないだろうか。
つまり、与沢翼という人間に、ニューヒルズ族という名称を与えて一般化させてしまったり、ああいう事業をITビジネスと呼んでみたり、定義づけが珍妙なために彼らのビジネスを勢いづかせている。
そもそも、昔のヒルズ族という名称から相当疑問だったけど、住人の職業が一様に一緒なわけでもないのにわざわざ属性を絞り込んで、ヒルズという単語にITを紐付けしてしまった事自体がどうかしていたのである。
始めっから与沢翼のやってることを「起業家ライセンス発行業」と指摘しておけばよかったし、正体不明の起業家とかいう言葉を使うのもやめておけばよかった。
大体、起業家ってなんなんだ。
何がやりたいか決まってもないような連中がセミナーに出席したら(あるいは情報商材とやらを購入すれば)起業家なのか、それは単に今の生活に嫌気が差している主婦とかサラリーマンなのではないだろうか?
実際起業家といっていい連中はうどん屋を開業するために政策金融公庫に融資の申込に行ったりしてるような具体的アクションを行なっている連中を指して言うのであって、会社ができたら起業家は経営者になる。
その定義付けが曖昧で何かが違っているから勘違いにレバレッジを効かせたグレーゾーンのしょうもない仕事がはびこるのだ。
物事の構図には必ずといっていいほど
加害者・被害者・第三者
の構図がある。加害者を非難するのは結構だけど、第三者も常識と良心にかけて
「君は起業家じゃない。高額なセミナー料金を払わされている変わり者の主婦なんだ」
「お前は起業家じゃない。仕事も真面目にせずに馬鹿なセミナーに通っているサラリーマンだ」
と現実の姿を指摘すべきだ。
加害者は、常に被害者を俯瞰している。そしてその構図を俯瞰して把握しているものは、我々第三者以外居ない。
つまり、そういう馬鹿げた行いに冷水を浴びせられるのも我々だけだということを心がけて生きていくべきではないだろうか。
この第三者の曖昧な定義付けは、結構様々な弊害を生み出してるなと思うので、また次回はその具体的な内容を書いてみようと思う。
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