IT・ソフトウェア産業が老化に弱い3つの理由 -倒産の真相-


システム・ソフトウェア開発業者の倒産数、過去最悪に

 (軍荼利 速報より)

 

 

帝国データバンクは1月15日、2000年から2012年にかけてのシステム・ソフトウェア
開発業者の倒産動向調査結果を発表した。

システム・ソフトウェア開発業界では、事業立ち上げの容易さやPC・携帯電話の急速な普及を背景に、バブル以降、数多くの企業が設立された。

しかし競争が激化し、リーマン・ショックや東日本大震災の影響などもあって2008年を境に倒産が急増。

2007年以降は、設立企業が大幅に減少するなかでの倒産増となっている。

 

 

 

確かに2008年以降の倒産ラッシュはひどかった。ネットニュース見てると知ってる会社がどんどん潰れていったのも記憶に残っている。

新聞のお悔やみ欄とか、訃報系で「心不全」と書いてあるような奴は大抵自殺なのも相場だけど、心不全が多発した数年間だったとも言える。結局、俺はこれは危ないと思ったので早い段階で見切りをつけて廃業したのだけど、中々そこまでドライになりきれない人は大変な時期を過ごされたことだろう。

 

ある会社では、社長が例の「心不全」になって、奥さんが受け取るはずだった生命保険を何故か幹部が会社の増資で全て吸い取って、結局倒産する羽目になって二重に悲惨だったりと、見切りが早かった者、そうじゃなかった者、そういう世相はどこ吹く風の成功者と3極の構図がくっきり分かれていたのが印象的だった。

 

 

まぁ、2000年前後からのIT企業の勃興の宴のあとといえば、それまでなんだけど、実際的には、この手の産業の倒産の理由はリーマン・ショックや大震災の影響ではなかったりするのが本当。

 

と、いうのも、天災が発生すればシステムのリプレイスや復旧が当然発生するわけで、それはそれで売上になるし、不景気になっても、多くの顧客は効率化をもっと追求するためにシステムには投資をして、それなりに売上はある。

 

具体的な問題というのは、それ以外のところにあるのが相場であって、3つの大きな焦点としては特異な労使構造、経営者の特性、資金繰りの3つの問題があると思う。

 

 

1 引きこもり・精神疾患など当たり前、会社と職業訓練所の区別がついてなさそうな人材の宝庫

 

誤解を招きやすい表現だけど、実際の現場では本当にそうなっている。

まず、労使構造としては、産業の歴史が浅いために、TOPの企業以下にそうそう良い人材は来ない。DeNAがマザーズに上場してからでも、新卒生の親で、子供達を引きとめようとするものが多かったくらいで、業界の認知度は低い。平均的な人材は本当にレベルが低いと思う。従って不可避の問題も発生してくるわけで、

 

・ちょっと気の利いた普通の人は高給を貰えて当たり前の業界

(5,600万貰えて当然の構造)

・どんなにやめて欲しいと思った人でもおいそれとやめさせられない

(次に来る人が本当にそれよりいい人材なのか??)

・引きこもりだった履歴があったり精神疾患の罹患歴のある人もいて当たり前

(差別はしないけど、やっぱり履歴書には職能が現れてるなと思わされてしまう経験盛り沢山)

 

 

以上のような構図で、人件費があっという間に恐るべき金額になっていく。十人に一人の有能な人、それ以外は普通 一般の産業のようなこういう構図であればまだやりやすいけども、

IT業界の場合は十人に一人が普通の人、それ以外の人が半人前という事例が圧倒的に多いのが特徴的。

そして、それでもなんとか頑張れる仕組みづくりや、労働環境の整備をやっていくと、結果的にどうしょうもない人の溜まり場になっていって、十人に一人組はだいたい独立するか、他社に転職していく事が多い。

幸い自分では後者の経験はなかったけど、経営している間中頭痛の種だったのが前者のほうだった。

いっそ人間性を捨て去って彼らの今後を考えるのをやめたほうがマシだろうと何十回思わされたことか。こういうシチュエーションでは人非人のほうがよほど金儲けできるだろう。

 

ちなみに、面白い思い出だけど(彼の名誉のために言うけども、仕事はちゃんと出来る男だ)、悪くない意味でも変わり者が多くて、事情があって俺の自宅で寝泊まりしていたある社員も、

行方不明になってみんなで探していたら、俺の部屋の布団の中で全裸で寝ていたなど濃い人間も多い。

 

要はどういう付き合い方をするかというのが大切なんだけど、同じ変わり者でも、仕事ができた彼と違ってやっぱり仕事の面では全面的にダメな人が多かった。

 

ダメな会社員は特徴的に、会社を自分の夢を叶える道具と思っている節があり、しかもその夢のレベルが著しく低い。

 



 

2 経営者が技術わかっても何の意味もないのがわかってないという致命傷

 

経営とか会社の存続に、実は技術なんか何一つ関係ない。大事なのはその場の時代の流れについていくことだ。

素晴らしい技術力を持った経営者とその信者のような結束の強い社員たち という会社も確かに素晴らしいけど、それは下請け業務しか出来ないという問題の原因でもある。

ある日、パラダイムシフト的な何かが起きた時に、そういう会社が不要になっていくのは数年ごとに証明され続けているわけで、むしろ技術に詳しくないほうが結局いい結果が出ている。

現場能力0の経営者と現場能力最強クラスの経営者を両方見比べた感想としては、前者のほうが生き残って資産を持っている場合が多い。

この問題については、商売とビジネスの区別がついてない人が多いため起きているといっても過言ではない。

 

前者の「商売」ではまさに今言っているような技術力ある経営者はたくさん居て、後者の「ビジネス」ではそのような人は殆どいない。

それは当たり前の話であって、数人規模で、まさに経営者を売り込んで行かなければいけない会社と、そうじゃない会社では大きく傾向が違ってくるってことだ。

もし、規模を大きくして行きたいと思うのであれば、何も特別な人間であることを目指さなくても、経営者の仕事というのは 誰に いくら 儲けを分配するか ということに絞りこまれていると理解するべきで、その他のことは、極論かもしれないけど人数不足などで起きている一時的な現象に過ぎないと割り切るべきだ。

 

 

目のつけ所がシャープでも、年をとったら肝心の視力はがたがたになってしまう。過信こそ大怪我の元

 

(だからといって、技術者の言ってることを無視しろとか、そういう事ではもちろん無い。出来ないなら出来ないなりに技術者には敬意を払って接していくべき。そして話してくれる色んなことに耳を傾けてみた方が良い。難解な部分はあるけど、込み入った技術の話は新鮮で面白い。)

 

 

3 老化を早めるのは大抵リースと銀行融資

 

つまりITというのは、設備産業ではないため、いわゆる設備的な「モノ」というのが決算書に乗ってこないのが当たり前の産業だということ。通常は、銀行から融資を受けるときに、普通の企業だと決算書の資産の部と同額までの融資については大体は5年以上、神経質な経営者の会社だと7年以上で起債している。

ところが、IT産業だとこれを3年くらいまでで組んでいる、というか組めない会社ばかりであって、ソフトウェア資産に換金性がなく、固定資産として何一つ認められてないというのが老化を早める癌になっている。

貸し出すときに、たとえIT産業では設備に相当するものを開発するのでも、銀行は運転資金名目でしか貸出できない。

 

例えば、同じように7000万円をそれぞれ

 

1 新製品の開発(ソフトウェア)、3年間

2 新しい工作機械の購入、7年間

 

で借入したとして、は毎年2500万円の返済、月額に直して200万円強、は100万円強程度の返済になってくる。しかも、利息についても1は運転資金扱いで借りる事になるため、設備資金と違って若干高めの利率になってくることは避けられない。

公的制度を利用したとしても、が1,7%くらい、が1,0%弱と大きな差がついてくる。少額なように見えてこういうことが重なってくると、最後の体力の差になってくることは、数字の公理上避けられないわけで、IT業界で何年かおきにグレート・リセットみたいな現象が起きるのは大きくこれが原因してると思う。

 

これについては、最終的には経営者の能力的な部分で乗り切るしか無いけど、2に当てはまる経営者の人はみんなこれが一番の苦手の分野で、借金のテクニックというものが全然ない場合が相当多い。

 

そして、これまた2に当てはまる人にありがちだけど、経営者の個人資産が全くない人が多すぎる。十歩譲って法人で、担保価値のある資産を持っていればまだ話は変わってくるけれど、切所になって銀行が距離を置き始めた時に、交渉の種になるものを全く持ってない人が殆どといって良い。

切所になると、1,2,3全ての問題が悪い方向に歯車が噛み合わさって、まずいことになっていきがちだけど、その速度を緩めて時間を稼ぐためには、個人資産か会社の剰余資産以外に使えるものは無い。

 

つまり、金額的な目安としては年間必要な運転資金の2割は、個人資産をいつでも動かせる状態にないと話しにならないってこと。1億の運転資金なら、今日言われて明日出せる金が2000万は必要。(ちょっとオーバーな表現かな)

 

綺麗な話が好きな経営者や実業家、技術者社長や起業家の卵の方は、株の話や資産の話を毛嫌いするけど、逆に、役員報酬だけでその数千万円もの金を作れると本気で思っているのだろうか?自分の頭で理解できない必須の項目を忌避しているだけだとは考えたことがないんだろう。

 

 

 金は後からついてくるという経営者は多いが、肝心の金が無いと金がついてくる前に餓死するのが現実。それがわかってない者のセリフは強がり以上の効果をもたらさない

 

 

 

 

現実的には、最後の泥場になった時に、よく読まれている起業家の本とか、ビジネス本は毒にしかなってないと思う。

「今の時代、不動産を買う経営者は経営者失格」「ITに固定資産は不要」「経営者は技術をよく知っていてガレージベンチャーが最高云々」

 

一昔前に起業家の本を読んだ奴や、ベンチャーキャピタルのやつはこう言っていたけど、現実的にはどうだろうか?

不動産に思い切った投資をしたアマゾンは、自前の流通センターから効率よい物流を実現して、送料無料という金字塔を打ち立てて、何も持っていない楽天に信じがたいほど業績の差をつけている。

技術に詳しいとは到底思えない、南場女史が立ち上げたDeNAは、ゲームマーケットで信じがたい好業績を出し続けている。

そして、何もそういった大企業に事例を求めるまでもなく、自分を特別だと思いたがらない多くの経営者は、起業家の卵やそういう本を書いている当事者より、多くの雇用を生み出して、豊かな暮らしを満喫している現実がある。

 

 

これらの事実から我々が学ぶべきなのは、経営や金儲け、人生の物質的な満足や現実の改善、雇用等のささやかな社会貢献に必要なのは、本に書かれた文字通りの絵空事や高度な技術より、現実で通用する生の「力」そのものだということだ。

それは多くの場合金や資産、それに関連した知識を指して「力」と言っているのであって、技術やビジョンが「力」の代用をなすことなど一切ないというのが「現実」である。

結果的にはキレイ事を言わなかった多くの人のほうが雇用や納税を通じて社会的に「良い結果」を出している。

 

 

まじめに働けば働くほど、キレイで真面目な考え方を持てば持つほど危機対応能力は低下する。むしろ、いかに仕事を短時間に圧縮して、急場しのぎの個人資産を増やしておくか考える必要がある。

「その時」になってモノを言うのは金や資産であって、真面目さや将来性は全く役に立たない、竹光以下の存在といってもいい。

 

 

IT・ソフトウェア産業が老化に弱い3つの理由の結論は、10年の時を経るうちに上記1,2,3の理由で、

 

・駄目な人間が幅を利かす会社になり、組織は根っこから腐っていきがちで

・経営者の技術は陳腐化して役に立たないにもかかわらず、新しい技術に閉鎖的で、しかも取り巻きがそれを助長しやすい傾向にあり

・適当に起債した借入が重たくのしかかってくる傾向が強く、しかもそれらの重さが、銀行融資ベースで換算すれば他の産業の倍の重さでのしかかってくる

 

産業だからであって、決して立ち上げの容易さで乱立した企業の数や、災害や不景気が原因だったわけではない。

 

むしろ、他の産業と同じ条件で金と人の問題が埋まれば、利益率の高さと設備投資の少なさで倍の寿命で生きることができる産業だ、ということ。

必然的に、ITで自由度の高い経営をしようと思えば、個人資産の利殖に熱心で、金融に通じた経営者になることの重要性こそが高い。

 

 

IT産業で、興亡を繰り返す企業群の大半は、規模の拡大と大儲けを目論んで設立された。しかし、その大半の人は、「ビジネス」としてそれを目論んだ時に、自分の人の良さを強調するのをやめにして、金と資産に特化した人間になる必要があるってことがわかっていなかった。そして、本を読んで覚えてきた「ビジョン」とか、元々持っていた「技術」を過信したおかげで、引き際を誤って人によっては「心不全」になってしまった。生半可な過信こそ大怪我のもとになる、という典型例だったとも言えるだろう。むしろ、過信すべき何かを持ってない人間の猜疑心のほうが強かったと言い換えることができる。

 

二兎を追うもの、一兎をも得ず ビジネスマンになりたかった彼らは、同時に「良い人」「ビジョンのある素敵な経営者」を目論んだがために「心不全」になってしまったのかもしれない。ビジネスマンになりたければ、本よりは現実を見るべきだったし、心を休ませたければ、ライフハックや起業家本と違うものを読んで、時には花鳥風月を楽しんでみればよかったのにと思わずに居られない。

 

 

これからの厳しい時代に、新たに起業しようと思われている起業家の方が、「心不全」にならないよう祈念して。

 

 

 

 

 

個人的に、そういった方面の勉強で一番役に立ったものといえば、この本。銀行や証券関係の人で、ちょっと年のいった人は皆さん読まれている名著だと思う。

 

 

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